他にどんなトラウマがアスカさんを苦しめているのか
ある日、心の奥に封印してきた
ある出来事に突き当たります
アスカさん (コタローは)私のこと恨んでないかなあ。助けてって。
それは、小学生のころに飼い始めたネコ、コタローの記憶でした
父親に怯えて暮らすアスカさんにとって
コタローは唯一甘えることができる存在でした
アスカさん こういうときやったら声かけてくれるよねとか、こういうときやったら一緒におってくれるよねというときに、ひたすら一緒にいてくれるネコがいたんです。私はいまだに家族って思ってるのは、そのネコだけなんですよ。
しかしアスカさんが17歳のある日、
父親は「コタローを捨てる」と言いだしました
アスカさんはひどく動揺します
しかし父親への恐怖から
一言も発することができませんでした
私はコタローを守れなかった
ずっと心の奥で自分を責め続けていました
アスカさん 分かってて止められへん自分が嫌だ。責めっていう感じかな。
市井医師 うん。
アスカさん そこで「やめて」って言わへんかった自分も悪いでしょ。
コタローをめぐる出来事こそが
最大のトラウマかもしれない
そう告げられたアスカさんは
これまでになく神経を尖らせていました
アスカさん すごいわがままを言っていいですか。
市井医師 はい。
アスカさん ビデオカメラ止めてもらっていいですか。
市井医師 私をとっておきますね。声だけ入るような形にしておきますので。
市井さんはEMDRを使い
コタローが捨てられたことには責任がないと
アスカさんを納得させてゆきます
市井医師 仲のいい友達の1人を考えてほしいんですけどね。
アスカさん はい。
市井医師 その子があなたと全くおんなじ環境で育ったとしましょう。彼女が(ネコを捨てられることに)抵抗できなかった自分の弱さを責めているわけです。それに対して、そのとおりだなあと思いますか。
アスカさん 思いませんね。
市井医師 なんてそのお友達に言いますか。
アスカさん 「なんにも悪いことしてないやん、怖いから抵抗できへんの当たり前やし」って言いますね。「そのネコ、あなたのこと絶対に恨んでないから。自分がいっぱい楽しい思い出を持っているのと一緒でネコのほうも楽しかったんやでってちゃんと思っているよ」って励ます。
このカウンセリングを通じて
アスカさんはコタローを救うために
父親と闘えなかった自分を初めて許すことができました
市井医師 ネコのことを通じて、自分が受けてきた虐待的な養育にも、ある種、終止符というか区切りを持てたので、それで新しく今、自分が作りたい関係っていうのをつくっていこうと。
過去にこだわって、そのことから今の関係を見るという、そういう形じゃ今なくなっているんじゃないかなと思いますけどね。
1カ月後、アスカさんは
長年苦しんだ頭痛やうつの症状から解放されていました
アスカさん このトラウマって、私一生抱えるんやろなって思ったんで。3カ月か4カ月じゃないですか、ここまで見事に消化するとは思ってなかった。一生背負うもんが終わるんか? っていう。これ、おお! 終わった? みたいな(笑)
この日をもって
アスカさんのトラウマ治療は全て終了しました
トラウマが消えたことで
父親の顔色をうかがって生きる自分とも別れることができました
アスカさん 私がいいっていうからいいやとか、私自身がこういうのが嫌いだからしないとか、自分の判断基準が自分自身になったって言うべきかな。
私自身が一番楽な生き方っていうのを今してるんで、今がすっごい楽ですね。
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