「手塚先生、今週疲れてるわ」田村淳×浦沢直樹×倉本美津留 ボクらの時代(2)

倉本　サイン会見に行ったらびっくりすんのよ、全員にちゃんと絵を描いてあげてるから。

田村　えー！　”浦沢直樹”だけじゃないんですか。

倉本　だけじゃなくて「何描いてほしい？」って聞いて、それちゃんと全部リクエストに応える。

浦沢　あの、手塚先生がね、生前必ず、すっごいレアなキャラ言ってもちゃんと。「新撰組の何描いてくれ」とか。

倉本　あー、めちゃめちゃレアなやつ。

田村　うわあー(笑)

浦沢　(笑)

倉本　浦沢さん、手塚さんと生前会われたんですか？

浦沢　僕ニアミスですよ。

倉本　あ、ニアミス？　ああ、そんなもんやねえー。

浦沢　パーティーで向こうから歩いてきて、あ、手塚先生と思ったら一緒にそのときにいた長崎さんていう人が直前まで(手塚先生の)担当編集者で、そしたら手塚先生がパッと長崎さんを見るなり「あの、あっ、すぐ戻るから、すぐ仕事戻るから」っつってタタタタッて逃げたんですよ。

(一同笑い)

倉本　そいで話せなかった？

浦沢　話せなかった。

田村　へえー。ニアミスだー。

倉本　ほんまにそうやね。

浦沢　もう、ね、あそこで一言、二言声をね、話しかけてみたかったですけどね。

倉本　話しかけてないからああいう作品が生まれたという気もしますけどねえ。

浦沢　でもさあ、倉本さんジョン・レノン好きじゃん？

倉本　まあ、好きというか・・・。

浦沢　ジョン・レノンの生まれ変わりだと思ってるじゃん。直接何を聞こうよりもさ、音楽をずーっと聞き続けて、その中でもらっちゃってるじゃない。

倉本　そうなんですよ。

浦沢　もう会話以上のことしちゃってるじゃない。

倉本　もう済んでるからね、必要ないんですよ。

田村　会話が必要ないってことですか。

浦沢　会って話すって、何話しゃいいんだろうって。

倉本　そうそうそう。

田村　ほーお。

浦沢　手塚治虫という人の線を見ると、今週調子いいか悪いか分かるもん、体調が分かるもん。

倉本　(笑)

田村　え？　浦沢さんが？

浦沢　そうそうそう。

田村　え？　調子が悪いときなんてあったんですか、手塚さんに。

浦沢　分かる、分かる。

田村　えっ、シャッシャッと描いてんなみたいなのが絵に出てるんですか。

浦沢　もう全然分かります、全然分かります。

田村　それは今ある作品を見ても、このころちょっと疲れてんなみたいなのが分かる？

浦沢　そうそう。疲れてるとか締め切りに追われてるとか。僕小学校のときから今週先生疲れてるわって。

田村　どういうふうなんですか。小学生が？

倉本　とんでもない小学生やもんね、やっぱりね。

浦沢　だから、そのころから自分でオリジナルを描くようになったんですよね。

田村　小学生から。

浦沢　うん。



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