2013年9月2日月曜日

「神様教えてくれませんか」宮崎駿スペシャル『風立ちぬ』1000日の記録(7) プロフェッショナル仕事の流儀



あくる日、静まり返ったスタジオに休日返上で机に向かう宮崎の姿があった
 

宮崎 難しいね。昨日考えたのと全然違うよ(笑) 全然違う。


前日の絵コンテを描き直すという。


宮崎 一つだけいい、これが正しいっていう答えがあるはずだ。それを嗅ぎつけるしかない、最善の策を。神様、これが本当に正しいのか、正しくないのか教えてくれませんかねって(笑) こんなカット割りでいいんでしょうかって。「好きにやんなさい」って。「いやあ、そんなあ」って。面白いでしょう?


突然、宮崎が不思議なものを描き始めた


エンジンも機関銃も付いていない、
 
二郎が夢見たであろう飛行機を形にしたという
 
 
美しいとはどんなものか


宮崎 純白っていうのは困る。表現しようがない。まさにビアンコ、無なんだよ。


二郎の内面にとことん迫ることが周りからの問いに答える唯一の道

それが宮崎の覚悟だった


宮崎 こんなへんてこなモチーフで作品をつくるチャンスが天から降りてきたんだって思ってるから、これは膝を折ったら申し訳ない。何に対してか分からないけど。すごい幸運だと思ってる。
 だからね、客なんか入んなくたっていいんだと言えるかっていうと、ちょっと待ってという臆病な自分もちゃんといるからね。そう簡単には言えないですよ。
 だけど、子どもが通路走るだろうなとか思うじゃない? 走るよなあ、これはと思うんですよ。子供連れて来るやつがいけないんだって次の瞬間思ったりするんだけど、連れてきちゃうからなあと。分かんない映画見るのも経験だよなとかね。


カプローニ 「君はどちらを選ぶね?」
 
二郎 「僕は美しい飛行機をつくりたいと思っています」
 
カプローニ 「あれかね?」
 
(夕暮れの中を飛ぶ飛行機の翼の上で語り合うカプローニと二郎、
振り返るとエンジンも機関銃もない純白の飛行機が2人の頭上を飛んで行く)
 
 
夢と現実が交錯する不思議なシーンに仕上がった
 
 
(宙返りをして2人の側へ戻ってくる飛行機)
 
カプローニ 「ほお、いい感じだ」
 
二郎 「いいえ、まだまだです。エンジンも、コックピットすら形になっていません」
 
(飛行機の後ろに手をかけ、空へ押し出す。彼方へ飛んで行く飛行機)
 
カプローニ 「ブラァボー! 美しい夢だ」

 
 
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