2013年8月5日月曜日

コミュニケーションの根源に迫る自閉症スペクトラム最新研究 サイエンスZERO 文字起こし




男性 人と話すのが苦手という意識が子どものころからあったんです。みんなポコポコつながって友達ができていくのを横目で見ながら、自分は友達ができないみたいな感じで・・・。


コミュニケーションの悩みから専門医の診察まで受ける人も少なくない。


精神科医 自分はコミュニケーションがどうだ、という心配をして来られる人が多い。とても、こちらでは対応できない数になっちゃっている。



実はこうしたコミュニケーションの問題、元をたどると赤ちゃんのころにまでさかのぼることが明らかになってきました。

一体どういうことなのか、そこでコミュニケーションの根源に迫るため、あの手この手で大実験。

すると、意外なものが重要であることが分かったんです。

赤ちゃん時代のあるものの使い方が大きく左右しちゃうなんて!

コミュニケーションの最新科学、大公開です。



1.赤ちゃんとコミュニケーション

竹内薫 僕もねえ、コミュニケーションはすごい不安がねえ、あるんですよ。

南沢奈央 ああ、そうなんですか。

竹内 だから、意外と不安持ってる人多いと思うんですよね。

南沢 そうですねえ。私も、まあ、どっちかっていうとそんな得意なほうではないんですけれど・・・。

竹内 ええ!そうなんですか。

南沢 お医者さんに行くほどっていう人が増えてるっていうのは、ちょっと驚きですよねえ。

竹内 そうですね。

中村アナ きょう、本当に誰にとっても身近なコミュニケーションの科学について見ていきます。実は、赤ちゃんのころから、もうコミュニケーションしてるんですよ。

南沢 へ~、赤ちゃんのころから? 赤ちゃんって、でもしゃべれないですよね? え? でもコミュニケーションが始まってる?



コミュニケーションの根源に迫る大実験

ご登場いただいたのは生後5カ月の赤ちゃん

(京都大学大学院 文学研究科 心理学研究所にて)

まだしゃべれないのに、実は立派にコミュニケーションできているっていうんです

その証拠をご覧に入れましょう


赤ちゃんの前には何やら妙なテレビ画面が置かれています。

ここでお母さん、赤ちゃんを置いて隣の部屋へ

実は、この画面、別室のお母さんが映る仕掛けなんです。

お母さんも画面で赤ちゃんの様子を見ることができます

テレビ画面を通してでも、お母さんにあやしてもらって赤ちゃんはニッコニコ!

赤ちゃんが笑うと、すかさずお母さんも笑い返す

すると赤ちゃん、ますますご機嫌に

コミュニケーション成立です。

ところが、ここでちょっと細工を

赤ちゃんに見せる映像を切り替えます。

お母さんは何もしていないのに画面の中ではあやし続けています。

実は赤ちゃんには、さっき録画した映像を見せているんです。

すると・・・。

あれ? 赤ちゃん、急に機嫌が悪くなっちゃいました!

本当に話し掛けていたときはお互いに反応し合えてご機嫌だった赤ちゃん。

ところが、録画では映像に映るお母さんは赤ちゃんにリアクションしていません。

赤ちゃんは、その不自然さを確かに感じ取っていたのです。

一見同じ映像なのに全く違う反応。

赤ちゃんにも立派なコミュニケーション能力があったんです。

ちゅごいでちゅ?




2.赤ちゃんと視線

南沢 うわ~赤ちゃんでもこんなに分かるんですね。

竹内 ねえ。言葉がないのに、何か違和感があるというか。

南沢 そう。ちょっと状況変えただけで、こんなに。最近、ドラマで生後5、6カ月の赤ちゃんをだっこしたときに、結構ジーッと顔を見てくるんですよ。目合うなと思ったら、やっぱり表情とかを観察してたのかなって。

竹内 やっぱり、読むんですかね。でも、大人と赤ちゃんで決定的に違うところもあるんですよ。

中村アナ ヒントはこちらです。

(画面がぼやける)

南沢 えっ? あら。

竹内 あれ?

南沢 すごい、なんかぼけてますけど。

中村アナ これ、6カ月くらいの赤ちゃんの視力を再現したんです。

南沢 えー? こんな、ぼやぼやしてるんですか。

竹内 赤ちゃんていうのは網膜とか脳の回路が発展途上なんですよ。なので、実験からの推測では、視力が大体0.1~0.2くらいだといわれているんですね。

南沢 そうなんだ。ちょっと自分が赤ちゃんのころ・・・覚えてないですね、そんな、ぼやけてた記憶ない。

中村アナ そうですよねえ。赤ちゃんの見ている世界というのは、ぼやけているんですけれども、実はコミュニケーションするときに大切なあるものに注目しているんです。こちらの実験をご覧ください。



視力が未発達な赤ちゃん、

一体何に注目しているんでしょうか。

赤ちゃんには好きなものをジーっと見つめる習性があります。

そこで見比べてもらったのは

同じような二つの顔の絵、AとB。

赤ちゃんが見つめたのはAでした。

今度はどうでしょう?

一瞬、Bを見ましたが、

ジーっと見たのはまたもやAの顔

この二つの顔、違いは目の向き。

赤ちゃんは自分を見ているAの顔に興味を引かれていたのです。



南沢 へー。だけど視力が悪くても目の向きって分かるんですかね?

竹内 じゃあ、もう一度赤ちゃんの視力を再現してみましょうか。

南沢 はい。

(ぼやけた南沢の映像)

竹内 こんなにぼやけてても・・・。

南沢 ああ。目の動きってすごい分かりやすいですね。結構白目が目立つからか、どっち向いてるかとか、動いたとか、そういうのは視力が悪くても分かったりしますね。

竹内 みたいですねえ。

南沢 うん。

竹内 やっぱり赤ちゃんってこれを見て目の動きが重要だっていうのを学習するんでしょうね。

中村アナ というわけで重要なキーワードとなるのがこちら。

(視線)

南沢 視線ですか?

中村アナ はい。

南沢 コミュニケーションと視線て、どう関係するんですかね?



コミュニケーションと視線の関係、こんな実験で丸分かりです。

最初は目の前の女性と遊んでいた赤ちゃん、

ここで物陰からおもちゃを出すと・・・

指をさしました

大事なのはこの後

目にご注目

ほら、女性の方を見た!

指した先を相手も見ているかどうか確認しているんです。

この一連の動作、コミュニケーションの発達にと~っても大事なんです。



板倉昭二教授(京都大学) 同じものに対して注意を向けてほしい、注意を共有してほしいという指さし、それが多分、自分から働き掛けるコミュニケーションの第一歩。これは、後々の言語発達にも関係しているといわれていますし、非常に重要な第一歩だっていうふうに考えています。



南沢 ああ、相手の視線を確かめてるって、すごいですね。

中村アナ じゃあ、その相手の視線を確認するということにどんな意味があるのか? 例えば、赤ちゃんとお母さんがいて、2人が見つめ合っているとします。赤ちゃんの前に車が現れました。赤ちゃんは車を見て指をさします。すると、お母さんもそれに釣られて車を見ます。次の瞬間、赤ちゃんはお母さんを見てるんですよね。

南沢 へえ。

竹内 こっからが大事なんですけれども、お母さんの視線から、お母さんが車を見てることが分かります。ということは、お母さんの心のなかに車があるんだっていうことが分かるわけですよ。

南沢 ああ、なるほど。心を読もうとしてるわけですか。

竹内 そういうことですね。

南沢 へえ。

竹内 で、この確認作業が、実はね、言葉にもつながっていくんですよ。つまり、「車」と言って見ている先に車があるので、それが車なんだっていうことで言葉を覚えていくという。

南沢 へえ、すごい! 本当に視線を見るだけで心も言葉も学べるっていうのはすごいですね。

竹内 ですね。

中村アナ このようにして、子ども時代に獲得した視線というコミュニケーションの要素、実は、これが大人にとっても重要だということが分かってきたんです。




3.大人と視線、自閉症スペクトラム


大人は視線をどのようにコミュニケーションに活用しているのでしょうか。

この研究室では、人が画像のどこを見ているかを解析し、

視線の謎に迫っています。

画面の装置の下から赤外線が出ていて、

瞳孔の位置や角度を検出、

画面のどこを見ているのか、リアルタイムで割り出すんです。

(「おかあさんといっしょ」のオープニング映像)

おにいさん、おねえさんを子どもが取り囲む、この映像

見ていたのは、ずーっとしゃべっている人の目ばかり

話す人の数が増えても、

やはり、しゃべっている人の目を巧みに追っていました。

実は、注目しているのは話す人ばかりではないんです。


(サイエンスZERO 過去の映像)

中村アナ 夏休み、どこ行きましょうか?(南沢のほうを見て)

南沢 山がいいかな。(手元の本を見ていたが中村アナと目を合わせる)

中村アナ 山ですね。(南沢から手元のパンフレットに視線を移す)

南沢 (うなずいて中村アナのパンフレットをのぞき込む)


はい、皆さん、どこを見ていましたか

実験結果はこちら

最初はしゃべる人の目を的確に追っていますが

最後に見たのは左の中村さんの手元のパンフレット

2人とも何か持っていますが

人は視線を追うように中村さんのパンフレットだけを見てしまうのです。


北沢茂教授(大阪大学) 私たちは何気なくテレビを見ているときにも高度に磨き上げられた、空気を読む社会性の機能をフルに使って会話を追っているんだと、こういうことが言えると思いますね。




南沢 うわあ! きっと、こういうのって意識せずにやってますよね。

竹内 空気を読む感じ?

南沢 うーん。

竹内 ドラマに出るときに視線ってやっぱり、すごく意識します?

南沢 そうですね、表情がアップで撮られたりとかするので、ちょっとキョロキョロしただけで動揺しているように見えちゃったりとか、結構、意識しながらやってますね。

中村アナ このようにして、私たちが活用している視線、実は、これがうまく活用できないことで深く悩んでいる方がいらっしゃるんです。



都内の病院で事務員として働く岩崎史義さん、

ある困難を抱えていたために就職が遅れ

30歳になったこの春、初めて職に就きました。

実は岩崎さん、雑談やグループでの話し合いが大の苦手、

みんなが話し合っていても、なかなかその輪に入れません。


岩崎 なんか言おうと思っても、どう言えばいいのかなあみたいに、それは少し、あの、何秒かかかったりするんで、 ま、その間にまた別の人がしゃべったりして話題が次にいってしまうみたいな。


岩崎さんは子どものころから人と話すのが苦手でした。

友達がなかなかできず、いじめられたこともありました。


岩崎 みんなポコポコつながって、友達ができていくのを横目で見ながら、自分は友達ができないみたいな感じで。


大学では、ようやくサークルを通じて仲の良い友だちもできました。

ところが、就職活動で大きくつまずきます。

筆記試験の成績はまずまずだったものの

面接では5段階で最低のE評価

いくら筆記試験の成績が良くても

不合格になる評価でした。


岩崎 少し、まあ昔より話せるようになっているつもりではあったりして。でも、それでもあんまり・・・それでも評価が低いんだ、みたいなのはありますね。やっぱ、面接とか向いてないのかなって、なんかすごく落ち込んでしまって・・・。


人と付き合うことに自身を失った岩崎さん

3年間ひきこもっていました。

その後、

コミュニケーションに悩む人が多く訪れる病院があることを知り訪ねました。

そこで岩崎さんが受けた診断は

自閉症スペクトラム

人間関係をうまく築けないのが特徴の障害です。


加藤進昌病院長(昭和大学附属烏山病院) 対人的なことには、どっちかっていえば鈍感ですね。子どものときから一貫してあるというところが一番の大きなポイントだろうと思います。


実は自閉症スペクトラムの人には

視線の動きに特徴があるといいます。

そこで、岩崎さんが画像のどこを見ているか計測してみました。

視線の先はしゃべっている人の目ではなく

口元、手元など不安定に動き回っています。

一般の人と比べると、

見ている場所が大きく違うことが分かります。

なぜでしょうか。


岩崎 目が合うような感じが、なんか、それがちょっと嫌であえて目をそらすみたいな感じはしてたんです。


そんな岩崎さんが

職場で最も苦手としているのが電話応対です。


岩崎 なんか、急いでる仕事の電話とかだったら、どう言おうかみたいな、なかなか言葉が出てこない。


その代わり得意なパソコンの技術や集中力を生かし、

データ集計などの仕事で力を発揮しているんです。



南沢 自閉症スペクトラムっていう言葉が出てきたんですけど何なんですかね?

竹内 ちょっと、こう、聞きなれない言葉ですね。

南沢 はい。

中村アナ それでは、ここから専門家の方と一緒に詳しく見ていきましょう。臨床発達心理士で、東京大学こころの発達医学分野、助教の川久保友紀さんです。

川久保 お願いします。

南沢 あの、自閉症スペクトラム、ちょっと聞き慣れないんですけど、どんな障害なんですか。

川久保 いわゆる自閉症の障害っていうのは、対人関係の障害っていうのが一つ目の特徴としてあります。
 次に、言葉と指差し、身振りなどの非言語のコミュニケーションの障害。
 3番目として、興味が限られていて、すごく狭いことに関心があって、だけど、それについてはすごい詳しいとか、あと、繰り返し同じ行動を好むとか、そういう特徴があって、言語が不自由だったりとか、少し知的な発達の遅れがあるっていうこともあります。
 一方で知的な発達の遅れっていうのはなくて、人との関わりみたいなところが難しい、それから行動が変わっていたりとか、特徴があるっていうような人たちのことっていうのはアスペルガー症候群というふうな別な呼び方をしていんたんですけれど。二つっていうのが別々のものっていうふうに思われてたんですけど、結局違うことが証明できなくなって、一つのくくりで自閉症スペクトラムっていうふうに呼んだほうがいいんじゃないかって今はなっているので。

中村アナ で、実は小学生2万人を対象にして、自閉症スペクトラムの傾向を調べた大規模調査があるんですよ。


この調査では保護者へのアンケートを基に

児童の自閉症の傾向を推定しました。

アンケートの点数を集計し、

何点取った人が何パーセントいたかをグラフにしたんです。


中村アナ 点数が高いほど自閉症スペクトラムの傾向が強いと判断されます。

川久保 一応線が引いてあって、ここから自閉症スペクトラムの疑いっていうふうになっていましたけど、なだらかに広がっていますよね。

竹内 結構、こう、グレーゾーンが大きいっていうことですか。

川久保 そうですね。だから、自閉症スペクトラム障害であるのか、そうでないのか明確なラインていうのはない。

中村アナ 確かに、さっきの岩崎さんみたく、こう、口元を見て話す人とかって普通にいますよね。

南沢 周りにいる気がしますね。

中村アナ なんか、ただ、ちょっとシャイな人なのかなって思うぐらいですよね。

南沢 そうそう。
 視線がうまく活用できないことが、そうやってコミュニケーションが上手くできないっていうことにつながっているということに気付きました。

竹内 どうして、この自閉症スペクトラムの人っていうのは、この視線の問題があるんですかね?

川久保 一つの仮説として、自閉症スペクトラムのリスクの高い方たち、その子たちが乳児期に非常に視力がいいっていうようなデータがあって。

南沢 へえ。

竹内 それは、どうしてそうなると、その自閉症スペクトラムと関係が出てくるんですかね?

川久保 もしかすると、普通は見えないことで、目に注目したりということで進んでいくところが、他の人には見えないものが見えてて、むしろ、そっちに目がいってしまう。そこで、発達が、目が悪いことでうまく進んでいくようになっていた部分が違うほうに長けていってしまうというか。

竹内 それ、なんか、ちょっと皮肉な感じですよね、目の機能がいいゆえに、もし、その自閉症スペクトラムのほうにいくっていうのは。

南沢 改善方法ってないんですか。

川久保 年齢とか、発達段階とかに応じた様々なトレーニングっていうのはされます。で、今、コミュニケーションの発達とかっていうのがだいぶ解明されてきたこと、それから早期に自閉症スペクトラムの診断ができるようになってきたことっていうのが合わさって、かなり早期の段階でのトレーニングっていうのが注目されてきています。

中村アナ そのトレーニングの大きなポイントとなるのも、やはり視線なんです。




4.自閉症スペクトラム、トレーニング(ESDM)



3歳までの子どもを対象とした、

新しいトレーニングを始めたのは佐賀市です。

2年前に開設、

自閉症の専門家から

1時間のトレーニングを月3回受けられます。

半年前からこのトレーニングに参加しているKくん、1歳9カ月。

母親はKくんが1歳になる前には

あまり目を合わせてくれないことに違和感を感じていました。


これは、Kくんが生後8ヶ月のときに

母親が撮影した映像。

(Kくんが向こうからハイハイしてくる映像)

撮影しているお母さんのほうを見ようとしないのが分かります。


専門家に相談し、

1歳4カ月からこのトレーニングを受けるようになりました。

最初は相手の目を見るどころか

人との関わりがほとんどなかったといいます。


服巻智子さん(臨床心理士) こちらから関わると、まず背中を向けるとか、自分だけで違う遊びをしようとかする。関わってくれるなというのがありありと分かるような動きをしますし、自分のほうから離れていくような。


ちなみに、同年代の一般の子どもを観察すると

おもちゃで遊んでいるときも頻繁に相手の目を見ています。

楽しいこと、興味のあることを共有しようとしているんです。

一方のKくんは・・・

見つめているのはおもちゃばかり

相手のほうはちらりとも見ようとしません。


そこで、作戦その1

セラピストはおもちゃを顔の前に近づけます。

すると、Kくんの視界には自然にセラピストの目が入ります。

こうして、楽しいことと相手の目を見ることを

Kくんの中で結び付けようというのです。


さらに、作戦その2

セラピスト自身がおもちゃのように振る舞い

Kくんの注意をセラピストに釘付けにします。


作戦その3

最も大事なのは

一瞬でも目が合ったときすかさずほめてあげます。

Kくん、うれしそう!



服巻 本人のほうからファっと見たときは、もう絶対にその瞬間を逃さない、そして楽しそうな、本人が好むリアクションを返すことで、あ、今の良かったかもって学んで、また見てみようっていうような状況づくりをしています。


半年のトレーニングを重ねたKくん

時間は短いものの

セラピストと目を合わせられるようになってきました。

さらにKくん、

子ども同士の関わりにも変化が出てきました。

同年代の子どもと遊んでいるとき、

Kくんの目が一瞬、他の子どものほうに向いたのです。

さらに子ども同士でも

おもちゃの取り合いをはじめました。

一見、普通に見えますが

Kくんにとっては大きな進歩なんです。



南沢 実際に成果が本当に分かる。

竹内 ありますねえ。

南沢 すごいですね。

中村アナ しかも、なんか子どもにとっても、そんな大きな負担にはなっていないように見えましたよね。

南沢 うんうん。

川久保 今のはアメリカで開発されたESDM(Early Start Denver Model)というトレーニングの方法です。見ていただいたように、遊びの中で言葉を引き出していったり、視線に注目させていったりとかしていくんですけど、基本的には人よりも物に興味がいきがちなので、人と関わることが嫌なことじゃないっていうことを伝えるようなトレーニングですね。

竹内 でも、この方法だと、なんか自宅で簡単にできそうに見えますけど。

川久保 いやあ、これは、多分自宅で簡単にできそうと見えたのは素晴らしいやり方だったんだと思うんですね。例えば、キャッチボールをするときとか想像していただきたいんですけど、相手がすごい上手な人だと、どんな球でも取ってくれて、自分に取りやすい球を返してくれる、なんか投げるの楽しいかも、キャッチボール楽しいかもと思えると思うんですけど、拾う技術とうまく返す技術というのがすごくあるので。自然に見えたやり方ほど難しいと思います。

中村アナ 他にもいいトレーニングっていうのはあるんですよね?

川久保 そうですね。いろんなトレーニングってあって、で、結局中身としては似たようなことをやっているので本質的には変わらないんですけれど。これだけがすごくいいっていうわけではないんですけれど、研究として効果があるかないかというのを、すごく厳密に調べた、そこも結構大きいポイントかなってところで、やっぱり効果があるっていうことをどれだけ客観的に示すかっていうことも大事で。ただ、あとは違う研究グループの人がもう1回同じことをやったときに、きちんと同じ結果が出るかというのも研究の上では大事で、結果を出す必要がある。

(ESDMは効果の有無が客観的に調べられている。が、さらなる検証が必要。)

南沢 やっぱり、このようなトレーニングは赤ちゃんのときからやったほうがいいんですか。

川久保 早く始められなかったらもう駄目なのかとか、そういうことではないとは思います。大人になってからだと、例えば空気が読めないということは確かに自閉症スペクトラムの人はあるかもしれないけど、その分、他の人にはできないような集中力を発揮できたりとか、細かいことできたりとかっていうのがあるので、自分の特性を理解して、苦手なことにはなにか対応するし、いいところは伸ばしていくし、お互いにいろんな特徴があって生かし合っていったら社会全体としては、すごいプラスになるんじゃないかなって思うんですよね。

中村アナ 結構、こう、普段の会話とかでも「あ、今の空気読んでなかったよね」とか「この人は空気が読めるからいい」とか、なんかコミュニケーションが過剰に重視されてる部分があるかもしれないですよね。

川久保 そうですねえ。

南沢 確かに敏感になりますよね。

中村アナ ねえ。

南沢 今周りの人がどんな顔しているんだろうとか、やっぱり、そういうのをどうしても見てしまう自分がいるので・・・。

川久保 なんか、別に空気読めなくてもいいじゃんっていう。1人で普通の人になろうというふうにするんじゃなくて、いろんなタイプの人が重なりあったことで、おっきい丸みたい、みんなが同じような丸になるよりも得るものってあるのかなって。

中村アナ 川久保さん、今夜はありがとうございました。

川久保 ありがとうございます。

中村アナ それでは「サイエンスZERO」 。

南沢 次回もお楽しみに。



再放送は高校野球が雨天中止の場合に

8月10日土曜日の12時30分からあるそうです






自閉症スペクトラムって私は初めて聞きましたが

その概念自体は1990年代に提案されたものらしいですね

検索すると、自閉症スペクトラム指数自己診断なんていうものもありました。

一般的には18~20点で33点以上ある方は自閉症傾向があることが多いと

もちろん、あくまで一つの参考にするだけで

これだけで全てが分かるわけではないと思いますが

自閉症スペクトラムに興味を持った方は

一度、ご自身でもやってみるといいかもしれませんね。

設問によって

自閉症スペクトラムの人はこういう傾向があるんだなということが

何となくですが知ることができます。


ちなみに私は20点

社会的スキル 5点

注意の切り替え 3点
細部への注意 4点
コミュニケーション 4点
想像力 4点

という結果でした。




最後の川久保さんの考え方はすてきですよね。

「いろんなタイプの人が重なりあって大きい丸になれば

みんなが同じような丸になるよりも得るものがある」

そうですよね、助け合って暮らしているんですから

1人で何でもできる必要はないんですよねえ。

男の人がいて、女の人がいて

足の速い人がいれば遅い人もいて・・・

でも少数派になったときには、どうしても

少数派だというだけでいじめにあったりして

そのことにコンプレックスを持つ人は多いですよね。


いろんなタイプの人がいてもいいんだと思うと

トレーニングをすることが果たして必要なことなのか

よく分からなくなりますが

トレーニングをして自閉症スペクトラムの人が

生きやすくなったり、自信を持てるようになることは

とってもいいことだと思います。

でも、それと同時にちょっと自分と違うだけで

避けたり、排除しようとしないとか

周りの理解も進んでいけばいいなと思いました。


番組でESDMについてお話されていた

服巻智子さんの公式ブログも見つけたので興味のある方はのぞいてみてください。

2014年の2月か3月に研究会も開催されるみたいです。

「プロフェッショナル~仕事の流儀~」にも出演されたことがあるんですね。



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