堀潤 じゃあですね、一つ義務教育という過程があります。国がどういった教育システムを敷いてきたのかというのを見ていきましょう。まずこのゆとり教育というものについてあらためて問題があるのかないのか、見ていきましょう。
VTR
日本が高度成長を成し遂げた1970年代は
受験地獄の始まりでもあった
「有名校から一流企業へとエリートコースを歩いてもらいた親たちの期待を一心に背負って、子どもたちは予備校や学習塾へと足を運ぶ」(当時のVTR)
そんな学歴社会が生んだのが大量の落ちこぼれ
校内暴力やつっぱりが社会問題となり
偏差値教育への批判が巻き起こった
さらに中曽根内閣の臨教審で
知識の詰め込みより
自ら学ぶ人材が必要との議論がなされ
学習指導要領の大幅な見直しにつながっていく
こうした議論の末
2002年ゆとり教育が本格スタート
学校は土日が完全休みとなり、授業は3割削減
競争心をあおることはなくなり
運動会から順位が消えた
このころ大ヒットしたのが
『世界に一つだけの花』
ナンバーワンにならなくてもいい
もともと特別なオンリーワン
そんなゆとり世代が今、続々と社会人に
しかし信じられないモンスターぶりが報告されている
ケース1 自己主張が強い
上司「靴がぼろぼろだ。もうちょっときれいにするように。社会人だろ!」
ゆとり世代「給料が少ないからしょうがないじゃないですか!」
ケース2 打たれ弱い
営業の成績が上がらない新入社員に上司がアドバイスすると・・・
その後3日連続で欠勤
その後、
「うつ病になったので長期のお休みをください」
ゆとりはとんでもないモンスターを生み出したのか?
スタジオ
石原良純 これはまず、かつてミスター文部省ともいわれた寺脇さんにお聞きしたいんですけれども。ゆとり教育は失敗だったのか。
寺脇研 まあ、これはまだ分かんないですね。その時点でどうかっていうことよりも、どういう人間が育ってくるかっていうことなんですから。だから今大学に入って来ているあなた(春香)たちの世代が。本当は検証はすべきだと思うんですよ、ちゃんと国としてね。どうだったのか、悪かったら悪かったで考えなきゃいけないから。ただ学力テストとかで測るっていうのはその時の問題でしょう。だから大学にも入って来ているんだから、全国の大学の先生に調査して。いろんな見方があるでしょうからそれを分析して、どういう先生はこういうふうに言う、どういう先生はこういうふうに言うって整理をすることが今必要だと思いますけど。
堀潤 平均化することより、伸びる子を伸ばそうというのがゆとり教育が最終的に目指したところだったのかなという・・・。
寺脇研 だから後で出るでしょうけど、運動会に順番を付けないというのは70年代ぐらいにものすごく広がったわけですね。でもそれは日教組の考え方と非常に関係しているところがあるだろう、それをやめようという考え方だったわけですね、中曽根さんの臨教審のときに。臨教審のときにその議論しているわけですよ、このごろは順番も付けないじゃないかと。そうじゃなくて、いいものはちゃんと伸ばしてやって。足の速いやつは1番でいいじゃないか、逆に勉強の得意な子は、みんなと合わせなさいということじゃなしに進めるようにしていいじゃないかというのがさっきご紹介いただいた根本的な発想。
石原良純 歌にあったようにナンバーワンよりオンリーワン。あれがまさしく言い得てるんですか。
寺脇研 まあ、言い得てるというかナンバーワンでいいんですよ。ナンバーワンにもいろいろあって、勉強がナンバーワンの子もいれば足が速いとか、あるいは人に優しく、お年寄りの介護なんかをするには力を持ってるとかね。
石原良純 でもそういう意味では伝わってなかったんじゃないかと。要するにオンリーワンであるっていうのは好き勝手なことができるっていう解釈のほうがまかり通ってしまった。
寺脇研 この歌は文部省が作ったわけではないので、あれですけれども(笑)
石原良純 ただ、僕らやっぱり時代の象徴として何となく・・・僕歌ってる方もよく知ってますけども、ものすごく努力されてるでしょう、世界の中で。
寺脇研 そりゃそうですよ。
石原良純 だから決してそれを語っているのではない歌なんですけど、それが理解されなかった。そのときにゆとり教育という言葉とシンクロした中で伝わんなかった。
北野誠 何か今のお話を聞いていますと、中曽根さんが思っておられたのと全然違う方向に教育行ってませんでした?
寺脇研 いや、しかし私たちは役人ですから、別に政治で決定したことに逆らうわけではないし、その後中央教育審議会とかでも議論していく中でやっていって。中曽根さんがここにいらっしゃったらどうおっしゃるか分からないけども、実はその2002年にスタートした直後に、朝日新聞に中曽根さんのインタビューが載っていて「臨時教育審議会で、自分がそのときに出した答申をきちんとやってくれて自分は良かったと思ってる。」とおっしゃってくださったから。役人としてはつくった政治家がこうやりたいって思ったことを実現するのが役人の仕事ですから、中曽根さんにそう言っていただいたのはうれしかったですけど。
井上和彦 寺脇さん、それは基本的に性善説でこういうものをつくられたっていうことになるんですか。
春香クリスティーン ゆとり教育ってひとくくりにされるのがゆとり世代としてはちょっと、こういらっとするものがあるのと・・・。
金美齢 ゆとり教育っていう言葉はきれいな言葉なのよ。人間誰でもゆとりというものを求めるわけだから。問題は、そのゆとり教育の中身っていうものが全く間違いだったっていうことと、私たちみたいな部外者だけど教育をやった人間には、こういうことをやっていれば絶対に駄目になるっていうのは最初から分かってた。だけども文部官僚ともあろうものが、または政治家ともあろうものがこういうことをやってたら駄目になるよっていうことが分からなかった事自体に問題がある。今、今後検証してどうのとか、大学の先生に調べてみてどうのこうのとか実に無責任な発言であって。あなたはゆとり教育の旗を振ったんだから、うんと反省して現在のこの状態っていうものをね。もし人間が公の場で発信をする、そういう立場に置かれた、そういうことをやったことのある人は時間が証明するわけよ。自分が間違ったこと言ってた、この制度は間違いでこの政策は間違いだったっていうことが分かったら潔く間違いを認めて反省すべきであってね、またこんなとこ、のこのこ出てきてね・・・。
堀潤 いやいや、僕は逆に。ちょっと待って、聞いてください。僕取材している実感ですけど、ゆとり教育は決して失敗だとは思いません。なぜなら若い起業家たちがイノベーションの部分でどんどん入っていって、シリコンバレーで起業したりしました。つまり、ゆとり教育で全体に標準化した教育から開放されて・・・。
石原良純 だけどそれを言ったら、自ら学ぶって言ったけど、自ら学ぶことの難しさってあるじゃないですか。自ら学べる人間ってものすごく少ないと思うんですよね。
堀潤 その学ぶだけじゃなくて、震災のときに結構若いボランティアが・・・。
金美齢 あのね、ちょっとあなた・・・。
石原良純 政治家の立場から・・・。
金美齢 ちょっと待って。あなたがそう言ってる人たちは、ゆとり教育じゃなくたってそういうことになってたのよ。ゆとり教育だからその人がそういうふうにイノベーションができるってことじゃ絶対ないって。それ基本にしてもの言いなさい。それから学校教育っていうのは大勢の人に教育するんですよ。つまり、日本の国の一番いいところっていうのはたっくさんの人たちが受けられるチャンスがある。そのチャンスをみすみす駄目にしたのがゆとり教育なのよ。時間を減らす、内容を減らせばこれがゆとりだと思ったことが大きな間違いなのよ。
石原良純 じゃあ、ちょっと政治家の責任ということで(山谷さんの意見を聞きましょう)。
山谷えり子 ゆとりという言葉は美しい言葉だったんですが、実際やられたことは緩み教育だったんですね。授業時間が3割削減されたことによって、OECD諸国で授業時間多い少ない真ん中で言えば、少ないグループに日本は入ってしまいました。そして私は大反対をしたんですが、3.14を3にしてしまったり、英語の必修単語を激減して、台湾や中国に比べると、中学3年間の英語のボキャブラリーの数は3分の1から5分の1なんです。ですからTOEFLなんかやりますと、日本はアジアで最低レベルの国になってしまっているんですね。こういう検証を第1次安倍内閣のときに致しまして、私は欧米、アジアの教科書も全部検証したんです。ですから寺脇さん、検証してないなんて嘘です、全部検証しました。
寺脇研 いや、検証って、その検証じゃなくて結果としてどんな人材ができたかっていうことが問題で。
石原良純 結果ができてしまったら取り返しがつかないんじゃないかって・・・。
山谷えり子 それで第1次安倍内閣でゆとり教育を見直しまして、そのときの教科書が去年から使われています。教科書のボリューム25パーセントアップ、数学ですと33パーセント、理科ですと45パーセントアップなんです。これから徐々に基礎学力付いてくると思います。で、まず基礎学力付けなければ考える力が育たないんですから.そして総合学習の時間、考える力を育てよう、個性を育てようという授業の組み立てをうまく日教組なり何なりがリードしなくて、もうばらばらの価値観を。きちんと根っこを育てるような教育をさせなかった、ここに問題があったので。私はきちんと検証をしましたから、きっとこれがうまくいくと思います。
石原良純 戸塚さんどうお考えになりますか、今のお話お聞きになって。
戸塚宏 ゆとり教育という考え方が間違っとったんじゃなしに、ゆとり教育の仕方が間違っとったんですわ。ソフトのほうの問題なんですわ。あれは明らかに詰め込み教育のアンチテーゼとして出来上がってきたものでしょう。
堀潤 そこに対応する教育現場の先生方が、なかなかいらっしゃらなかったのが問題なんじゃないですか。
戸塚宏 誰もいなかったんです。
金美齢 私、よく聞かれましたよ。「ゆとり教育って言うけど、何を教育すればよろしいんですか」ってこと現場の先生にたっくさん相談受けたことある。
堀潤 そこを結局学習塾などが肩代わりしてほとんどやっていた・・・。
金美齢 ゆとりっていうのはね、基本がちゃんとできてなければゆとりっていうのはないっていうことを、教育をやる人間が分かってなかったということが一番の問題。
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